キリスト教の聖地のあとに訪れたのが、ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」。約2,000年前の神殿の壁面跡で、祈りを捧げる信者が多い。観光は自由ですが、頭頂部を隠すマナーなので、自分もキッパと呼ばれる帽子をかぶります。ここも世界遺産。
訪れた時、ちょうどイスラエル軍の任命式で武器配当を行なっていました。イスラエルは国民皆兵制で、18歳以上の男女ともに1年半~3年の徴兵義務があります。イスラエル軍はユダヤ教徒のみなので、聖地で武器配当と、つまり国と軍と宗教と民族の一貫性が特徴的ですね。後に紹介する聖地マサダでも任命式を行うようです。
ちなみに配当されている銃は、アメリカ製「M-16」、イスラエル製「タボール」というあたり、イスラエルとアメリカの世界孤立の政治色もしっかりと感じます。
暫くすると、多くの人が午後の祈りを捧げに集まって来ました。伝統的な顎髭、黒服、黒帽子、もみあげのユダヤ教原理主義者も散見しています。中間に仕切りがあり、向かって左が男性、右が女性です。なぜここが「嘆き」といえば、紀元前に破壊された神殿を憂いたため、アラブ支配時代にユダヤ民族がここを訪れられなかった悲願とのこと。この壁のすぐ直上がイスラム教の第三の聖地「岩のドーム」です。
イスラムの指導者ムハンマドが昇天した際に足あとを残した岩がある場所です。この2つの宗教の聖地の近さ、第二次世界大戦後のユダヤ教徒のイスラエル国家設立などの要因が、アラブ諸国との反感を買い、中東戦争に続きます。
そういや、最近こんな事件がありました。
中東のエルサレムにあるユダヤ教の聖地=「嘆きの壁」の近くで21日、
アラビア語で「神は偉大なり」と叫んだ男性が、ユダヤ人の警備員に拳銃で射殺されました。
警察によりますと、警備員は男性がアラビア語で叫んだためパレスチナの武装組織のメンバーだと思い、
複数回にわたって発砲したということです。射殺された男性はパレスチナ人ではなく、40代のユダヤ人だったということで、
警備員の勘違いだとみられるということです。男性がなぜアラビア語を叫んだのかなど
詳しいことは分かっておらず、警察が当時の状況を詳しく調べています。事件が起きたエルサレムの旧市街は、ユダヤ教やキリスト教、それにイスラム教の聖地が集中し、
イスラエルとパレスチナの対立が長年続くなかでも特に衝突の火種となりやすい場所です。
それだけに、今回の事件は両者の緊張関係を改めて浮き彫りにしています。(NHKニュース、2013/6/22)
行ったときは治安はよかったのですが、それだけ緊張状態にあるということ。2つの宗教の溝は深いです。
ユダヤ教の聖地の隣はすぐアラブ人街です。土産物屋のおっちゃんと仲良くなりました。
3,200年前のユダヤ、2,000年前のキリスト、1,400年前のイスラムの各宗教の起源、キリスト処刑、十字軍進行、アラブ支配、ホロコースト、第二次世界大戦、イスラエル建国、中東戦争と歴史が階層のように積み重なり、今現在も厚く塗り積もられている。そんな重厚感があるエルサレムでした。