原発とマスコミ

DSC_0721今回は小難しい内容を連々と書きます。ただ今回は、このブログは中庸な立場を心掛けていましたが、わけあって今回は個人的な意見を述べます。

Brdt3cBCUAATd6uたまたま金曜夜に首相官邸の交差点を歩いていると、大音響で原発反対の抗議デモをしている集団に出会した。その交差点の向かいは機密保護法撤廃、そのまた反対側は集団的自衛権反対。

新聞報道は相変わらずの減点方式、選挙戦で選ばれた第一党が叩かれる、民衆は、誰の意図かも知らないSNS拡散を目的としたデマネタに振り回される。

個人的には、良くも悪くも民主主義が機能しているなあ、と感じる。

原発に関しては、ブログを見て頂いたやや右寄りな機関誌に記事依頼され、熟慮の上、お断りした。自らの意見や思想を出す行為が自分の本位ではないし、中庸な立場で物事を捉えて判断したかった。とは言え、伝えたいことはある。

 

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■マスコミの情報は正しいのか

正しい情報を伝えるのがマスコミの使命であることは、恐らくマスコミも理解しているはず。しかし、報道機関によりネタの取捨選択や扱い方が異なるのは自然なことで、それが報道のカラー(主義主張や政治的思想)に反映される。報道が政府や団体、スポンサー企業の陰謀だと感じる人もいるだろうが、その通りだと私は思う。それが民主主義。

思い出してみると、いろいろな国を旅行していて、独裁政治や社会主義国家で、国政批判をしているメディアはあまり聞いたことがない。

ことさら人間は活字化されたものや映像表現にとても弱い。戦時中のプロバガンダが定型的な例で、いとも容易に人心は流されてしまう。日常生活において、あらゆる箇所に垂れ流されている情報は、本人が意図せずとも吸収され、その情報の膨大さに慣れてしまった人々は、情報の信頼性に一片の疑いも持たなくなってしまう。口をそろえて言うのは「テレビで言ってたから」「本で書いてあったから」「ネットに載っていたから」。紛れも無く、自分自身もその大多数の一人である。

 

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■デマと民衆

水は低きに就くが如し。

重力の制約上、水は、坂道を転がすビー玉のように、より低い地点を選択する。孟子の諺で、自然の成り行きには逆らえないという意味だが、人の心もまた同様に、より安易な方向を選択しがちである。

誰かがデマを流す、それが噂となり悪評として広がる。このシステムは旧来から存在していたが、現在はSNSという便利で高度な媒介ツールがある。より早く、より簡易に、より広範囲に、民衆の心を揺さぶるデマを流布できる。マスコミではなく、発信者の特定できないソースのため、情報の信頼性に責任はない。ただ民衆はデマをデマと思わない。

では、誰が何のためにデマを流す必要があるのだろうか。広告費を稼ぎたいのか?政治的優位に立ちたいのか?税金を上げたいため?原発撤廃?風評被害?そしてそれは、面白半分に流す必要が本当にあるだろうか。 つまるところ、マスコミと目的は同様なのでは、と個人的には思う。因果応報ではないが、デマもマスコミ報道も信憑性の違いこそ大きくあれど、本質は同等なのだと思う。

当然ながら情報の受け取り方も個人次第であるからこそ、デマにしろ報道にしろ価値を見いだせないものだとは思ってはいない。

 

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■原発とマスコミ

前置きが長くなったが、原発はマスコミと民主主義と切っても切り離せない関係性にある。

唯一の被爆国である日本が、原爆投下を受けたのが1945年。第五福竜丸の事故が1954年。そして日本初の商用原子炉の臨界が1963年。戦後たった18年後しか経っていない。

こんな無茶が実現した背景には、一説ではCIAと関係が深く、読売新聞の経営者であった正力松太郎の影響が大きいと言われている。原発の日本輸入が議論された当初、国民感情にマイナス意見がむしろ強かった。 マスコミがプロモーションをした成果と言われている。

 

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■もし原発がなくなったら…

一方、原発反対派が唱える「自然エネルギーはすでに実用段階にあり、既得権益につながらないから表立って実施しないだけ。原発からの完全撤退をしたドイツを見習え」はどうだろうか。ドイツの実情を見たほうが良い。

ドイツの電気料金はメルケル首相就任移行、二倍以上になっているだけではなく、ドイツ国内の電気料金では国内生産の利益を賄えず、電気が安い隣国チェコに工場を移管し、依存する企業が増えた。チェコでは、好景気に沸き、電力不足から新設で原発を建設。その原発は、安倍政権が必死で輸出を仕掛ける東芝製。さらにドイツでは火力発電の比率を上げざるを得ず、国内生産が減少することから、ユーロ危機以降もEUきっての高水準だったGDPが伸び悩みにつながる。

すべてのバランスを取るなんて、そんなに簡単なことではない。

 

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■つまるところ、エゴイズム

産業革命以降、人間は猛烈にエネルギーを求めた。18世紀半ばの石炭から、石油や天然ガスに転換した。やがてそれらも枯渇や、価格高騰、地球温暖化が問題となり、そして原子力が注目された。

全ては、人間の豊かな生活と繁栄のため。

インドネシアは、国内の経済発展と、環境問題と、原発の安全性を天秤にかけ、最終的に国民投票で原発を選択した。スマトラ島沖地震の津波も、チェルノブイリも、福島第一の事故を経たのに関わらず。

周辺国の経済発展が著しい中、工場誘致においては、電力不足は国際競争の致命的なデメリットになる。

インドネシアは、温暖化が進むと都市部の大部分は水に浸かってしまう。経済発展と温暖化は諸刃の剣だ。そして経済発展をするにしても、不安定な石油資源に依存はできない。慢性的な電力不足と産業資源の乏しさと引き換えに、豊富な労働力やウラン燃料がインドネシアにはある。そのため、原発を選んだ。

日本人が否定できる立場にはない。日本でも、原発停止後は、高沸する化石燃料での火力発電を続けている。京都議定書での温室効果ガスの削減目標も、今となっては二の次。相変わらずの金銭的な排出権取引で帳消しをしている。

「子供たちに安全な世界を」とは、原発がなく汚染リスクもないが、化石燃料が枯渇し、温室効果ガスで満たされ温暖化が進んだ世界だろうか。 一方、原発を撤廃し、ドイツのように経済成長が止まり、GDPとともに失業率が上がり、メタンハイドレードなど技術的に困難なまま代替エネルギーも見つからず、それでもやむを得ずとして電気料金を値上げする、としたら国民は納得しないだろう。

でも、それでは無責任すぎないか。

 

無題

長崎県の軍艦島を訪れたことがある。来年世界遺産に推薦される、かつて炭鉱があった島。現在人は住んでおらず荒廃し廃墟になっている。

元島民のガイドは、廃墟を背景にこう言った。

「人類があらゆるエネルギーを使い果たし、使い捨てた土地は、ここにある私の故郷のように荒廃してしまうのでしょうか。これが子どもたちに残したい地球でしょうか」。妙に心に残った。

すべてはエゴで成り立っている。

 

 

参考出展・文献

■IMFレポート2014

http://www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=28

■「原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史」有馬哲夫

■「原発のウソ」小出裕章

■原子力コンセンサス(2013)電気事業連合会 http://www.fepc.or.jp/library/pamphlet/pdf/consensus2013.pdf

■「制裁エネルギー拡大の課題」富士通総研 http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2012/no396.pdf

■ATOMICAデータ「スロバキアの原子力事情」

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-06-08-02

■ATOMICAデータ「チェコの原子力事情」

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=14-06-07-02

■ドイツのエネルギー大転換 その最新の展開

http://jref.or.jp/column/column_20140314.php

■LEVELIZED COST OF ELECTRICITY RENEWABLE ENERGY TECHNOLOGIES Fraunhofer ISE

http://www.ise.fraunhofer.de/en/publications/veroeffentlichungen-pdf-dateien-en/studien-und-konzeptpapiere/study-levelized-cost-of-electricity-renewable-energies.pdf

■経済産業省 総合資源エネルギー調査会 参考資料

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denkijigyou/genshiryoku/pdf/001_s01_00.pdf

■nuclear Power in Czech Republic

http://www.world-nuclear.org/info/country-profiles/countries-a-f/czech-republic/

■Nuclear Power in Indonesia

http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-G-N/Indonesia/

■Government considers guaranteeing electricity prices to pay for Temelín expansion

http://www.radio.cz/en/section/marketplace/government-considers-guaranteeing-electricity-prices-to-pay-for-temelin-expansion

■大和総研「インドネシアの原子力開発事情」

http://www.dir.co.jp/consulting/asian_insight/120720.html

■IAEA CURRENT STATUS OF INDONESIA’S NUCLEAR POWER PROGRAMME

http://www.iaea.org/NuclearPower/Downloads/Infrastructure/meetings/2012-01-TM-WS-Vienna/Day-2/5.CurrentStatusNPPProgram-SSriyana.pdf

■電気料金の仕組み

http://www.t-enecon.com/cms/wp-content/uploads/2013/11/enecon_books003_02.pdf

■All Photos from Flickr

http://www.flickr.com/

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