私は、右でも左でもないのを最初に強調しておきますが、普段、スポーツなどの祭典でよく聞く「君が代」が如何に音楽的かつ歴史的にすごいか淡々と語ろうと思います。
※参考:「君が代」
■知ってからよく聞くと奥深いメロディー
アメリカ合衆国国歌やフランス国歌に比べて、若干暗い、地味、と感じたことはないでしょうか。
これには明確な理由があるようです。
君が代の最初の「き」は、「レ」の音で始まり、最後「まで」の「で」も「レ」で終っている。いわゆる短調っぽい作りなのに、実は東洋独自の雅楽などに利用されている陰旋法音階がベースになっている。
事実、旋律を考えたのは、明治初期の雅楽師奥好義とされている。
この陰旋法音階は「ドレミソラ」の5音で構成されている。普通の西洋音楽は「ドレミファソラシ」の7音。
なので、「君が代」も全体に雅楽っぽいのだけど、一箇所だけ陰旋法にない「シ」の音が使われている。「八千代に」の「ち」の部分のみ。実は東洋独特の陰旋法だけではなく、厳密には西洋音楽のエッセンスも入った「和洋折衷」だったりするのではないかと自論です。実際、メロディーが付けられたのは明治初期だったので、文明開化を意識したのではないかと。
単純に音階だけ見てしまえば、楽論的には短調でも長調でもないスケール(Dドリアンスケール)というものになっています。
■超アクロバティック編曲
今、一般的に聞かれる伴奏は、この短調でも長調でもないDドリアンスケールに、ハ長調の伴奏をつけた、かなりアクロバティック編曲になっています。君が代の冒頭と最後に和音が無い(ユニゾン)のは、敢えてというか、難しいからだったのかもしれません。
例えて言うなら、日本の寿司のネタに、ドイツのソーセージ使ったような感じ。
私が個人的に好きなのは、「八千代に」の「よに」の間、伴奏が「レ-ミ♭-ミ」担と続く箇所が、
レ | 安定感 | (-_-) | 協和音 |
ミ♭ | 不安定 | Σ( ゚д゚)!! | 不協和音 |
ミ | 開放感 | (;´∀`) | 協和音 |
としているところが、まるで国家が数々の危機を乗り越え、永続的に発展していく意味合いを連想させるようで叙情的だなあと。(上の君が代動画だと16秒あたり)
あ、あと暗さで言えば、個人的には歴史的にイスラエル国歌の主旋律ほうが暗いと思います。
■世界一短い国歌の歌詞
上記のような要約が有りますが、歌詞の内容自体の解釈は自由ですし、国で規定はされていません。
天皇を称える祝詞であったという一説が、右派か左派かを隔て、あれだけ歌われているにもかかわらず、なんとなく君が代を讃えると「右だ!」と叩かれるのは、全て解釈の違いなんだと思います。
そもそも確かなことは、これは10世紀に編纂された古今和歌集の短歌であること。
五七五七七で、「さざれ石の」の1字余り含めて32文字の世界最短の国家歌詞であるようです。
少し改変されてはいるものの、1,000年以上前に日本の誰かが読んだ詩< 読み人知らず>が、日本の国歌になっているって、ロマンチックではありますよね。そもそも1,000年以上前の文章が、乱世を超えて、よく代々引き継がれてきたなと、歴史的な厚みを感じたりもします。